ウロボロスの波動

カテゴリ:小説
日時:2005/10/03 21:32


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西暦2100年、太陽系外縁で、火星ほどの質量しかないブラックホールが発見される。そのブラックホールの軌道を人工的に変えて天王星の衛星とし、さらにその周囲を覆う巨大な構造物を建設してブラックホールからエネルギーを取り出すプロジェクトが開始される。

このプロジェクトを推進する組織「AADD」、価値観や経済問題からAADDと対立するようになった地球。

この世界観をベースに、6つの短編が紡がれる。 ミニブラックホールからエネルギーを取り出す発想。地球から宇宙に進出し、異なる価値観と組織形態を作り出したAADDの人々。AADDと地球の関係。まずもって、綿密に構築された世界観が物語に安定感をもたらしている。土台がしっかりしているため、それぞれの物語に必然性が生まれるのである。

また、各短編は世界観を共有する「SF」であるにとどまらず、異なる味付けがなされていてあきさせない。表題作「ウロボロスの波動」はミステリ風であり、またAIと人間の関係というテーマを持っている。

「ヒドラ氷穴」は、暗殺者の行動が何を目的としているのか、それをどうやて達成するのかが謎として提示される。この暗殺者とそれを阻止しようとするAADDの動きをタイムリミット付きで交互に描くことで、緊迫感をあおっている。

「エインガナの声」「キャリバンの翼」では、「ウロボロス~」で暗示されたモノにフォーカスが移っていく。またミニブラックホールについての衝撃的な示唆、世代交代、そして旅立ちが描かれる。

どの短編も非常にクオリティが高いのだが、難をいえば毎回舞台や登場人物が異なるため(一部共通)、その状況に入り込むのに若干苦労するところか。そこをクリアすれば、ドップリ浸れるので許す。