老ヴォールの惑星
カテゴリ:小説
日時:2005/08/26 23:38
かろじて生存できる程度の環境に保たれた迷宮に追放された人々を描いた「ギャルナフカの迷宮」。
ホットジュピターに生きる、姿も生態もまったく異なる生命体の物語「老ヴォールの惑星」。
木星資源の採掘を行う異星人とのコンタクトを目指す「幸せになる箱庭」。
海しかない無人惑星に1人で不時着した男の生涯「漂った男」。
小川 一水の中篇4本を収録。 特に表題作「老ヴォールの惑星」はよかった。ホットジュピターつまり恒星至近を公転する摂氏1200度の木製型ガス状惑星で生まれた、人類とはまったく異なる生命が主人公という斬新さ。彼らの生態も面白い。ラストもよかった。
「ギャルナフカの迷宮」も、その特異な迷宮の設定と主人公たちの生き様に引き込まれる。ああ、これ以上書くとネタバレになってしまう。
「漂った男」はやや中だるみが気になるが、それさえ乗り越えれば感動のラストが待っている。
どの物語も独創的な舞台と状況を設定したうえで、主人公(たち)に絶望的な運命を突きつける。だが、必ず多くのものを失いはするが希望が残るラストが用意されている。静かな感動を得たい人にオススメ。