完璧な涙
カテゴリ:小説
日時:2005/07/16 00:13
本棚に眠る神林長平作品を読み返そう、ということでランダムにつかんだ1冊。ああ、これか。
感情を持たず、社会から阻害された少年宥現。街を取り囲む砂漠に埋もれた古代都市。そこから発掘された漆黒の戦車はターゲットを破壊するまで追跡をやめない破壊兵器だった。
戦車に追われ、戦い続けることになった宥現は、過去と未来の戦争に巻き込まれていく。 物語の始まりと、宥現が遺跡の番人になってからではまったく印象が異なるストーリー展開。
それでも比較的普通だった「完璧な涙」以降になると、神林ワールド炸裂というか、独特の禅問答全開。「時間」のありようがどんどん崩壊し、過去と未来そして現在の概念が曖昧になっていく。それが神林のシャープな文体で綴られているのを読むのは快感だが、登場人物たちの会話についていくのは大変だ。
かなり疲れる話である。久しぶりに再読したおかげで、昔よりはかなり理解できたが。
主人公が語る時間の概念はうまい表現だね。ああ、さすが神林だ、とあらためて感心させられた。