風林火山

カテゴリ:小説
日時:2005/12/07 22:44


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実在しなかったとも、実在はしたが身分は低かったともいわれる山本勘助。第四次川中島の戦いで「啄木鳥戦法」を進言し、討ち死にしたとされているが、それすらも定かではない。確実な史料にはほとんど登場しない、半伝説的な人物。

本書は、この山本勘助を主人公とし、彼が武田家に仕官する直前から第四次川中島までを描いた物語である。勘助だけでなく、晴信(信玄)や晴信の側室となる諏訪頼重の娘 由布姫それぞれの魅力が本書を名作たらしめている。2007年の大河ドラマ原作でもある。 主役の勘助役も決まったことだし、内野をイメージしながら10数年ぶりに読み返してみた。やはり内野では違和感があるが……。原作は文句なく面白い。

井上靖のすごいところは、信玄を書き、川中島の戦いを書きながら、上杉謙信を名前だけの存在にとどめ、キャラクターとしては登場させなかったことである。凡庸な書き手であれば、謙信を登場させる誘惑に勝てなかっただろう。

さて、どんな大河になることやら。明らかに1年はもたない原作をどう膨らませるのか(勘助の青年時代をやるといってもねぇ……)、そして晴信&由布姫のキャスティングが成否のカギだな。