モナ・リザは高脂血症だった 肖像画29枚のカルテ
カテゴリ:そのほか
日時:2004/05/09 19:57
絵画や像に見られる特徴から、医学的に診断を下すという本書。
歴史学には、死亡前後の症状(嘔吐した、肥大化したなど)の記録や遺骨などから病名を推定するというジャンルがある。そんな感じのものを期待したのだが……。 例えば、高台寺蔵の秀吉の肖像画を取り上げ、両手が極端に小さいと指摘。で、これは多指症を目立たなくするためであると結論する。この時点で突っ込んでもよいのだが、まぁいい。その後信玄や信長、謙信などの肖像画も登場。どれも手が小さく描かれている。そうか! 彼らも多指症だったんですね! 篠田先生。って、秀吉以外はスルーですかそうですか。
つまり、文字史料を基に結論を用意し、それに合うように肖像画を解釈しているのである。柳田理科雄的な手法といえるだろう。すべてのネタがそうというわけじゃないんだけど。
そもそも、秀吉が多指症(指が6本)だったという記録が残っているのは有名だが、逆に多指症に言及した史料が少なすぎる。多指症だったと断定するのはためらいを感じるのだが。このように、薄弱な証拠を基に論を展開している点もマイナス。