武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新

カテゴリ:日本史
日時:2004/09/23 18:28


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著者が古書店から購入した「金沢藩士猪山家文書」には、きわめて珍しい精巧な家計簿が含まれていた。この家計簿や書簡などから、とある下級武士の暮らしぶりが浮かび上がる。

加賀金沢藩の陪臣にすぎなかった猪山家が、前田の直参に取り立てられ、さらに数代を経て明治政府下で海軍官僚に。その間に彼らが経験する借財整理や結婚、出産などなど、時代劇など比べ物にならないリアリティがある。 本書の主役は下級藩士の1家、「猪山家」である。出版とほぼ同時期に買ったものの、その地味さに手が伸びずにいた。んが、これは面白いぞ。読み始めたらとまらない。一気に読んでしまった。

1605年に死んだ猪山家初代は、1000石取りの加賀金沢藩士に仕える陪臣に過ぎなかった。5代目のときに前田家直参となり切米40俵取りに。猪山家はさらに数代を経て、維新直前には知行180石へと昇進していく。9代目は大正時代まで生き、海軍官僚として高所得を得るまでになる。

猪山家の立身物語としても面白いのだが、江戸詰めで負債を抱え、膨らんだ借財を整理するため家財を片っ端から売り払ったり(売却品目録あり)、娘の髪置の祝いに大鯛が用意できず、鯛の絵を描いて代わりにしたり。その祝いに駆けつけた祖父母が気遣って、小鯛と鰯の料理を持ってきたり。貧しいながらもがんばっている様子に、つい感情移入してしまう。

収入に対して交際費や葬儀代が占める割合や、どんなときに何を買っているか、どこからどのように金を工面しているのかなど、武士の生々しい実態も明らかになる。

これは読んでおいた方がいい。絶対面白い。