ホーキング、宇宙のすべてを語る
カテゴリ:科学
日時:2005/11/16 00:56
書名は16年前の名著『ホーキング、宇宙を語る』とほぼ同じながら、内容は事実上ゼロから書き起こされている。
もともとホーキングの著書は平易で分かりやすく、前著もそれによって大いに評判となったが、本書はさらに噛み砕いた表現を使い、身近で直感的な例を引きながら難解な宇宙論を開設している。 16年前の著作と比べると文字も大きく行間も大きくとっている。情報量は減少したものの、前著よりも最新の宇宙論が取り入れられており、文系人間でも「分かったような気持ち」になれる。
もちろん、ひも理論や4次元時空の中に含まれる折りたたまれた6~7次元など、どうにもイメージできない概念にも話が及んでいる。理論上は何とな~く分かったような錯覚を得ることができるものの、ビジュアル的にイメージできないと納得できないのは文系人間ゆえか。これらの概念はほかの本でも読んでいるので知ってはいるが、いまだにピンとこない……。本書の説明の分かりやすさはトップクラスなんだけど。
それでも、前著『ホーキング、宇宙を語る』に出てきた虚数時間(2乗するとマイナスになる時間)なんてシロモノは出てこないので、文系の人でも悲鳴をあげるようなことはないはず。文系人間が宇宙論に触れるには最適の1冊である。
ただ、ちと概説に振れすぎてしまったかな(啓蒙書なんだからいいんだけど)。ブルーバックスなどでそれなりに宇宙論に接している人には少々物足りないかも。