邪魅の雫

カテゴリ:小説
日時:2006/10/04 22:07


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江戸川、大磯、平塚で次々に発生する殺人事件。共通点は、殺害方法が毒殺であることのみ。青木やすっかりアクの抜けた山下らが捜査に奔走する一方で、益田は榎木津の縁談にまつわる調査をすることに。

複数の「物語」の間に生じた齟齬は徐々に1つの像へ収斂し、悲しい結末を迎える……。 というわけで、京極堂シリーズ最新作。各登場人物がそれぞれの視点で「事件」と向き合い、話を紡いでいくスタイルはこのシリーズでもよくあるパターンだが、今回はそれがテーマの1つに昇華している。

話の構造は非常に複雑に入り組んでいるように見えるが、各物語の中心となる人物だけに着目していればわりと単純な構造であることに気付く。そのため、齟齬・矛盾点の原因については、早い段階で気付くことになるだろう。だが、最後に京極堂が語る物語は、予想以上に悲しいものだった。

今回は京極堂の出番が極度に少なく、このシリーズの名物である妖怪うんちくはなし。ちょっと京極堂らしくない。そういえば、今回は関口も探偵閣下もロイヤルバカオロカデリシャスも、「らしくない」面を見せていた。そういう物語だったのである。