シェークスピアは誰ですか? 計量文献学の世界

カテゴリ:そのほか(暫定)
日時:2004/10/23 10:36


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文章に使われている単語や句読点、単語の長さや語彙など、文章の意味ではなく統計的な側面から分析する「計量文献学」。

本書は、この計量文献学を利用して、グリコ・森永事件の「かい人21面相」の脅迫文やシェークスピアの著作、プラトンの『第七書簡』、『紅楼夢』、『イザヤ書』、『源氏物語』などの筆者・著者の謎を分析する。 よく知られていることだが、シェイクスピアの著作は別人(フランシス・ベーコンなど)が書いたとする説がある(『シェイクスピアはどこにいる?』)。日本では、『源氏物語』の「宇治十帖」の著者に疑問が持たれている。この問題に対して、統計学的な手法によるアプローチを提唱しているわけだが……思ったほど面白くなかった。

本書の内容の多くが他者による分析の紹介にとどまっており、1作品に対する分析方法は1、2例程度で説得力に欠ける。自分が統計学というか数字に弱いということもあるのだろうが、「~の結果、数値に明らかな差が表れた」として示された数字も誤差の範囲に見えてしまう。「読点の付け方や単語の使用頻度には個人差がある」として分析しながら、「あるきっかけで文体が変わることがある」「別人が同じクセを持っている可能性がある」と認めているなど、良心的ではあるが(笑)「結局何んなんだ?」と思わされる。

1冊まるごと使って1テーマ(1作品)に絞って分析したらかなり面白そうだが、手を広げすぎてすべて中途半端。新書にありがちなパターンになっている。まぁ、謎解き自体よりも「計量文献学の紹介」が目的のようなので、これでもいいのかもしれないが……。う~ん、単なる数字遊びに見えるなぁ。

書名にもなっているシェイクスピアの真の著者の検討についてであれば、先に挙げた『シェイクスピアはどこにいる?』の方が圧倒的に面白い。このテーマに興味があるなら、本書よりも『~はどこにいる?』を読みましょう。